バイオフィルム



虫歯、歯周病を理解するのにどうしても、理解してもらいたい言葉です。
バイオフィルムとは、定義を書くと
「細菌集団を含んだマトリックスで、互いにそしてあるいは表面または境界面に付着しているもの」
とコスタートンらによって定義されています。
何のことか、よくわかりませんね。


一番簡単に説明すると、ゴミなんかがあるとことのヌルヌル、ベタベタ、、、、
細菌がその細菌の周りに産成する、菌体外多糖、すなわちヌルヌルです。




これそのものに強い毒性はありませんが、この菌体外多糖に
取り囲まれることにより、細菌はより住み心地のいい環境を、自らの
力で作り上げていくことになります。

ここで理解しやすいように、イメージを書いてみたいと思います。
まず草刈りをして、きれいになった場所があります。
数ヶ月のうちに、草が生え、いろいろな植物が育ってき、何年もした頃には
草の中に木が混じり、そしてさらに何十年もすると木が育つ。
そしてさらに数百年、、、それは林になり、森になり、ジャングルになる。

ジャングルを作っている植物を細菌だとすると、一つの種類の細菌を取り出しても
それだけで生きていくには困難が伴います。
例えばジャングルにあるツタ、、こんな物最初の草原に植えてもすぐに枯れてしまうでしょう。
ツタは大きな木とその影と、湿気などのいい環境があって始めて生き生きと生きていけるわけです。
ジャングルの中の方が心地いい、へびや、ひるなどの動物もたくさんいます。
その中には強力な毒素を出す物もたくさんいるでしょう。

歯周病菌も、毒素を出す本当の原因菌というのは
3種類くらいといわれています。その細菌だけ取り出して、培養した物に
いろいろな薬剤を試してみると、また音波や、超音波等を直接当てると、その細菌は
たやすく死んでしまいます。
なのに口の中にその薬剤を入れても歯周病が全く治ってしまうと言うことがないのは
このバイオフィルムという存在が様々な攻撃から中の細菌達を守る大きな森になって
いるからだと考えられています。

このヌルヌル、ネバネバは少々水にさらしたくらいでは溶けることはありません。
そして都合の悪いことに、このヌルヌル、当然のことながら生きているわけではないので
どんな薬剤にさらしても、へっちゃらです。
(パイプマンなんかをお口に入れたらそれを取り除くことはできるんでしょうが、、
よい子はまねをしないように、、)

バイオフィルムには、かなり高濃度の薬剤でもない限り、中の細菌を殺すほど薬剤がしみこんでいかない
という特徴があります。

細菌の増殖スピードは、もちろん植物に比べるとめちゃくちゃ速く、
どんなにお口の中をきれいにしてもたった数日でもとのジャングルにもとどうり、、、

ではどうしたらこの森はきれいにできるのか。
今のところ一番有効な手段は、機械的にこのバイオフィルムを含めて取り除いてしまう、、
すなわちブラッシングや、フロスなどでごしごしこする、、
というのが答えです。

もちろんこのバイオフィルムを何とかしようとする、薬剤の開発や、
投与方法、機械的清掃方にしても、音波歯ブラシや、超音波歯ブラシ
その他電動歯ブラシ等の研究はどんどん進んでいます。
しかし今のところ、バイオフィルムを除去する事なしに、中の細菌を
殺すことは不可能なので、やっぱり歯磨きしないといけない、、、
という結論です。

参考   1999デンタルハイジーン別冊 わかるできる実践ペリオドントロジー

歯科学講座


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