カリオロジー

虫歯のことを専門的に齲蝕、虫歯になった歯のことを齲歯
虫歯の穴のことを齲か、といいます。

ここで虫歯のプロセスについて考えてみたいと思います。

まず歯面に齲蝕原性菌の感染が起こります。
この時点でプロセスの停止すなわち幼児期におけるミュータンス菌感染の防止がなされれば
健康な歯面が保たれます。


齲蝕原性細菌が定着します。(プラーク形成、バイオフィルムに守られた形となります)
細菌の栄養となる糖分が細菌に取り込まれていくと
歯牙表面のプラークの下でpHが下がってき、
ここで歯牙表面の脱灰(だっかい)が起こります。脱灰とは酸によって
カルシウムイオンやリン酸イオンが歯牙から溶け出すことです。
下がったpHは口腔内の唾液の洗浄作用や、緩衝作用(pHを中性に戻そうとする化学反応)
によりpHは中性に回復します。
そして最近よく言われるようになってきたのが、歯の再石灰化。
中性に戻った歯牙表面では、唾液中のカルシウムイオンの取り込み、リン酸イオンの取り込み
が起こり、もとの状態に戻っていきます。






この時点ではまだ歯に穴は開いていません。
歯の表面に白濁がある状態で、この状態の時、プラークの除去を徹底すると
再石灰化が促進され、もとの健康な歯牙表面に戻ることも可能です。
この状態を早期発見し、元に戻す治療、これができれば最高です。

そして、齲蝕原性細菌が定着し、脱灰がさらに進んでくると歯牙はその構造を
維持できずに崩れ、それが虫歯の穴になるのです。

ここで、虫歯になるかならないかを決める要因(キーワード)を書いていくと


1齲蝕原性細菌(ミュータンス菌)の、親から子への感染2唾液の量
3唾液の緩衝能
4歯質と臨界pH
5食生活
6フッ化物

それぞれについて詳しく書いていきたいところですが、長くなってもいけないので簡単に

1、ミュータンス菌のほとんどは2歳前後までに定着すると言われています。
    そのため虫歯の多いお母さんは口腔内を清潔にすることで、
    子供への感染を減少させることができ、また、お母さんの口に入れたものを、
    子供に与えないようにすることも必要となります。
    プラークがたくさんついているのに、虫歯の少ない子、よく歯磨きしているのに
    虫歯になる子、それは口腔内に定着している細菌の種類によるものと考えられます。

2、唾液の量はよく噛むとか、しっかり運動する、口呼吸して口の中を乾燥させない
     等が関連してきます。また睡眠時には唾液の分泌が停止するため、寝る直前の飲食は
     極めてハイリスクになりやすいことが考えられます。(寝る前に歯磨きするのがいい理由)

3、緩衝能に関しては遺伝的なものが多いのでどうすることもできませんが
     その緩衝能を調べることによって、虫歯に気を付けなくてはいけないか、どうかの判断ができます。

4、歯質、これが強ければ脱灰されにくいですし臨界pHも下がってきます。
     歯質はちょうど木でたとえると、緻密で堅い木もあれば、大木だけどすぐポキッと折れるような
     木もあります。骨でもそうですよね。骨密度とか聞いたことがあると思います。
     歯質は年齢と共に結晶化が進み、30才頃にはかなり虫歯になりにくい
     状態となります。はえ立ての歯は弱いと言うことですね。

5、6、食生活、フッ化物これは1番重要なことなんですが、臨界pHを超えている時間が
     長いほど脱灰量が増えていくので、食事の回数が少ないほどいいです。
     そういうことでおやつの時間を決めて、だらだらと長い間糖分をとるようなことは
      いけない、ということになるわけです。
      またフッ化物は再石灰化の促進、歯質の耐酸性の向上、細菌の抑制、
      体内へのカルシウムの取り込み促進という作用があり
      最近では骨粗鬆症の治療にも積極的にフッ化物をとろうという話しがあるくらいです。
      また最近よく話題になるキシリトール、リカルデントなども細菌の抑制効果がある
      代用甘味料として知られてきました。

これらが複雑に絡み合い、虫歯という一つの病気が進行していくわけです。

虫歯になったら治せばいい、、、、、という考えはそろそろ辞めて
虫歯にならないためにどう予防していくか?
それを考えるのが最近のカリオロジーとなっています。


参考   1999デンタルハイジーン別冊 わかるできる実践カリオロジー

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