歯周病学ペリオドントロジー
歯周病とは何か、ちょっとマニアックに、学問的に解説したいと思います。
理解しやすいように、
まず昔の考え方から説明していきましょう。
かつて1955年頃までは、歯周病の原因は、歯石である、、そして歯石のせいで歯茎に
炎症が起こるとされていました。
1960年代に入って、その後の研究によってに出てきた説が、歯石に着いた細菌の出す毒素
これが歯肉の上皮細胞を破って侵入、歯周病を引き起こすという物
プラークは歯肉の上も(歯肉縁上)歯肉の溝の中も(歯肉縁下)
プラークは代わりない物だと考えれれていました。
70年代になると、歯肉縁上と、縁下ではプラークの組成が異なり、大切なのはプラークの量ではなく
質であることがわかってきました。
細菌の種類としてはグラム陰性嫌気性菌が歯周病と深く関わっていることが明らかになり
80年代になると宿主と細菌の関係によって歯周病が進行したり、小康状態になるということが
理解されるようになりました。
宿主というのは細菌が感染している人のこと。
わかりやすくいうと、人の免疫反応によって、歯周病が進行していくことが解明されてきました。
そして90年代にはいると、歯周病は疾患修飾因子として、環境的リスクファクター、遺伝的リスクファクター
などがあり、細菌の攻撃、宿主反応、修飾因子の相互作用により、様々な状態が
口腔内にでてくる物と考えられています。
実際にどのような物質が影響を及ぼしているのか、、、
グラム陰性嫌気性細菌から出されたリポ多糖(LPS)低分子の代謝産物などの毒性物質がバイオフィルム
から放出されます。
こうした細菌の攻撃が、生体側の上皮に悪影響を及ぼし、炎症反応を引き起こします。
炎症反応とは、外からのストレスによって発生する生体の防御反応です。
、
組織が攻撃されると血管からは、サイトカイン、プロスタグランジンなどの起炎物質
(炎症を起こす元になる物質)が放出され、炎症反応が開始されます。
これにより歯肉は腫れ、赤みを持ち、熱を発生し、痛みを伴います。
これを宿主免疫炎症反応といいます。
歯周組織、歯槽骨の破壊。
宿主免疫炎症反応がおこるとサイトカインと呼ばれる、細胞の増殖、活性化、組織修復
などの生理的反応を調節する物質群が働きます。
(インターロイキンー1や、TNFーα(腫瘍壊死因子ーα))
まずLPSなどの細菌由来の毒性物質によって刺激されたマクロファージや、
多形核白血球が産成したプロスタグランジンE2が破骨細胞を活性化したり
繊維芽細胞を活性化させます。さらに、サイトカインも破骨細胞の活性化を促進し、
歯周組織の破壊、歯槽骨の破壊が進んでいきます。
人によってこの炎症反応は反応が大きい人、小さい人と様々で
これがまずまずきれいにお口の中をしているのに歯周病が進行している人
それほど歯磨きをしていないのに、歯茎が健康な人、とわかれていきます
(ちょうどアレルギー体質だとか、過敏に反応する花粉症だとか、
そういうものをイメージするとわかりやすいと思います。)
また細菌の中には歯周組織を破壊できるような酵素を
分泌し、直接歯周組織を破壊するようなものもあります。
しかし実際にはほとんど変化なく進行する場合があります。
一連の反応がゆっくり進み、痛みなどを感じることなく、常に、起炎物質がいる状態
この状態が、体外にある細菌を攻撃できず、結果的に自分の骨を溶かしてしまう、
(破骨細胞を活性化し、骨を生成する速度に比べて、破壊する速度が上回り、結果的に骨がなくなっていってしまう)
これに疾患修飾因子として、環境的リスクファクター、遺伝的リスクファクター
たとえば環境でいうと、たくさんの甘い物や、たばこ、糖尿病などの全身疾患、口腔内衛生状態、
ストレスなど、遺伝でいえば免疫力、唾液の緩衝能、遺伝的疾患、などによって
歯周病の様々な状態が、起こってきます。
こうして歯を支えている骨が解けてなくなり歯がグラグラしてきて最後には歯が抜けてしまう、、
これが歯周病です。
ではこのよけいな炎症を止めてしまえば良いのか?というとそうではありません。
もしこのような炎症が起こらず、細菌が、骨内にまで進入してきたら、
血行の悪い骨はあっという間に細菌に犯され、ダイレクトに骨がボロボロにされてしまいます。
体は自分の骨を溶かすことによって、結局は自分の体を守るように、合目的的に働いているのです。
歯周病原性細菌は、口腔内に存在する300種類の細菌のうち、ほとんどの歯周病に
関係しているのはたったの3種類ほどだといわれています。
以下がその細菌です。
ポルフィロモナス ジンジバリス
アクチノバシラス アクチノマイセテンコミタンス
バクテロイデス フォーサイタス
難しくなってしまいましたが、現在はこの細菌学や、バイオフィルムに対しての
研究が進められているところです。